2010年11月12日

ナンシン王朝プレイ記・4

注意書きはこっち
ご理解・ご同意いただいた方のみ、続きをどうぞ。


 ミリディア王都からチャルダラへの援兵は、無い。
斥候の報告と、クミスネの卦の結果は完全に一致していた。

「『聖女』ミツハの孤立、最早疑う余地もねえな」
「ああ」

この様子ならばチャルダラ進攻戦の勝利は目前。しかし言葉を交わすチャンとテムギンの表情に、浮かれた楽観の色は一切無かった。戦へと赴く男の顔。
やがて、チャルダラ市街を守る古い外壁が、新参のトゥロを伴って進軍を続ける三人の視界に映った。

「迎撃が出てくる様子はあるか?」
「いえ、城壁外に人の姿は見当たりません」

テムギンの問いに、トゥロが答える。森の民の弓手であるトゥロは非常に視力が良く、今回の進攻では全軍の「目」としてチャン達ナンシン軍に同行する運びとなっていた。

「あちらさんは篭城戦か。市街地に乗り込むのはあんまり気持ちの良いモンじゃねえが」
「掠奪の禁止は徹底しておけよ。お前の配下は騎馬民族の癖の抜けない奴が多すぎる」
「わかってらあ」

チャンと二言三言の言葉を交わし作戦内容の確認を行うと、テムギンは駿馬を走らせた。彼の率いるジャムカ族の荒くれたちが、そしてイェフィで編成した騎兵隊がその後に続く。
ジャムカ族は今でこそ遊牧で細々と生計を立てる少数民族だが、元はクレフ全域で恐れられた精強なる騎馬民族。
勇者テムギンが族長の座についてからは、チャン=ウーファンへの服属を誓い穏健路線に転向しているが、彼らの身体に流れる好戦の血は全く変わっていない。
そんな果敢さに満ちたテムギン隊が先陣として敵陣を穿ち、チャン率いる本隊が雪崩れ込むための突破口を作る。それが、チャンと打ち合わせた作戦内容だった。

にわかにテムギンの跨る駿馬が大きく嘶き、足を止めた。馬は後足立ちとなり、ばたつかせる前足が空を切る。

「止まれ! お前たち、死にたくなければすぐに止まれ!!」

張り裂けんばかりの大声。叫ぶテムギンの横で、後方で、次々と騎兵がその疾駆を急停止させ……
数秒の後、彼らの前方―――距離にして十数メートルほどの位置に、まるで花火のような七色の光の雨が降り注いだ。
ミツハ=ヴァンドルーア率いる魔兵隊の魔弾一斉発射。小石ほどの大きさの光弾は見た目こそ美しいが、直撃すれば人や馬の四肢を折り頭蓋を粉砕するほどの威力がある。

「ありゃあミツハ子飼いの魔術兵団だ。やはり外壁の向こうに伏せてやがったか」

テムギンは一つ舌を鳴らしたが、その表情に苦慮や悩みの色は欠片もなかった。
チャンに従って以来、初の大掛かりな戦である。むしろ、自身の力を試す好機の到来が嬉しい様子ですらあった。

「いいか、1・2・3で一気に駆け抜けろ。立ち止まる事は死を意味すると思え」
「1」
「2」

「3!!」

光の雨の切れ目を見計らい、テムギンが右手の馬上刀を振り上げた。同時に先頭の駿馬が、後に続く騎兵隊が、弾丸のごとく風を切った。
降り注ぐ魔術が光の弾丸なら、テムギンの用兵は風の弾丸。流浪の騎馬民族の子として、幼い頃から馬と羊を友とした男の騎兵捌きは、まさに疾風怒涛と呼ぶに相応しかった。
魔兵隊は詠唱の妨げとなる重装備ができないため、白兵戦となるとまったくの無力である。吹き荒れる暴風の如き騎兵隊は、瞬く間に魔兵隊の懐へと雪崩れ込み―――

そして、その先頭を突き進むテムギンが見た物は……
驚愕を隠す事も体勢を立て直す事も出来ず、後退を始めながらもただ己の魔術のみで応戦を試みる「聖女」の、今にもその場に崩れ落ちそうな悲愴な表情だった。

主の危機に駆けつけたズーク=ロイスブルグの別働隊が、テムギンの騎兵隊の脇腹に決死の突撃をかけた。
側面攻撃を受けたテムギンは、ミツハの追撃を断念しこれに応戦。
程なくチャンの本隊が到着し、ズークは多勢に無勢で敢え無く囚われの身となった。が、彼は身を挺して主を逃がすと言う従卒の務めを見事に全うしたのだった。



364年3月 チャルダラ攻略戦:勝利
     ズーク=ロイスブルグ捕縛
posted by 霧野 流 at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | フリゲ
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/41696713
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック