2010年10月13日

ナンシン王朝プレイ記・3

注意書きはこっち
ご理解・ご同意いただいた方のみ、続きをどうぞ。


 春の兆しも見えつつある2月末。二人に遅れてイェフィに到着した俺を出迎えたのは、かつて見た事も無いほど統制の取れた精兵たちだった。
ルーシュンを出る頃には寄せ集めの感も否めなかったこいつらに、一体何があったのか。恐らく訓練を担当したであろうテムギンに聞いても、「普通にシゴいただけ」と答えるのみでそれ以上の返答は無かった。
あまり他者には明かせない、ジャムカ族伝統の訓練法でもあるのだろうか。まあこの思いがけぬ出来事により、俺はミリディア進攻に足るだけの精鋭を手に入れる事が出来た。

一方のクミスネは、イェフィの街で意気投合したと言う少女を俺の元に連れてきた。
少女の姓名はトゥロ=ララトラ。森の民の出身で、弓の使い手らしい。
我がナンシン軍では初めての、専門的な弓手。機動戦となるであろうミリディアの戦では活躍の場も少ないと思われるが、彼女の腕が必要となる時はきっと来るに違いない。

機は熟せりと見た。俺は全軍に出陣を宣言し、ミリディア領チャルダラに向けて軍を動かした。3月初頭の事だった。


夜が来る度に、あの紅星は我々の頭上で哀しげな輝きを放った。
紅星を毎晩見上げるクミスネの表情も、日に日に少しずつ悲哀の色を増しているようだった。

そして、出陣から数日が経ったある夜。
斥候のもたらした情報を聞くと同時に、クミスネは今にも泣き出さんばかりの顔で、俺の腕に抱きついてきたのだ。

斥候の情報は…… チャルダラの守将は、「クレフの聖女」ミツハ=ヴァンドルーアである事。
そしてミツハは、従卒のズーク=ロイスブルグと己の手勢だけを供に城を守っているとの事。以上の2件だった。

「ごめんなさい、チャン様。ずっと……ずっと…… 言い出せなくて…… 怖くて……」

今にもかすれて消えてしまいそうな、小さく弱々しい声だった。

「あれは、間違いなく、ミツハ=ヴァンドルーアの宿星なんです……」

俺は黙ってクミスネの瞳を見つめる事で、話の続きを促した。あどけなさの残る琥珀色の瞳は、すでに涙でいっぱいになっていた。

「ミリディアと遠からぬうちに干戈を交える事も、わかってたんです……
 だから、聖女ミツハは、私たちの手で命を落とすんじゃないか、って…………」

クミスネは、この乱世には些か不釣り合いなほど優しい娘だった。
自身よりも年の若い少女が――それも、たまたま人並み外れた力を持ってしまった故に祭り上げられた人物が、非業の死を遂げるなど考えたくない。
それも、その直接の原因となるのが自身の仲間だなんて―――

「それは、無い」

自分でも驚いてしまいそうなくらい、即座に俺は断言した。思考を巡らせるより先に口が動いていた、そんな感覚だった。
余程の自信があったのか、それとも泣きじゃくる子供のようなクミスネをただ落ち着かせたかったのか、真意の整理が成される前に言葉は発せられていた。
本来なら、指導者としては最もやってはいけない事の一つだっただろう。そんな男がセレス=ミリディアを小娘呼ばわりしているのだから、実に笑止極まりない。

「第一に。『クレフの聖女』を討てば、それはクレフ全域を敵に回すにも等しい所業となる。
 第二に。『クレフの聖女』を失う事は、我がナンシン軍を含むクレフ地方全体の損失と呼べる」

どこぞの若鷲でもあるまいし、我ながらよくぞこんな綺麗事をぺらぺらと真顔で言えた物だ。が、次の発言だけは心の底からの確信を持って言う事ができた。

「第三に。クレフ最高の魔術師とて、我らの前ではただの小娘に過ぎぬ」

数ヶ月に渡ってミリディア・チャルダラに密偵を送り続け、つぶさに国内の観察を続け、得た結論だった。
己の類稀なる力と女王セレスの信頼に、甘えきった彼女の行動。それは、俺の目には自ら孤立を招いているようにしか映らなかった。
多少なりとも大人としての立ち回りがあるなら、ランジェ=マリメデあたりに根回しをしておくくらいの政治的努力はするべきだろう。
しかし彼女に、そう言った行動を起こした形跡は何一つ見られなかった。

女王さえ味方なら良い、自分には力がある――― この思考、この精神、小娘と呼ばずして何と呼ぼうか。

「討つ事による利も少ない。そして、除かねばならぬほどの脅威には決してなりえぬ。
 ミツハ=ヴァンドルーアは、死なんよ」

精神の伴わぬ力に実は無い。俺が修めてきた拳法の教えだ。
それに何より、大将たる俺がミツハを恐れていては全軍の士気にも関わる。

「クレフの聖女、恐るに足りず!!」

俺はクミスネの頭を軽く撫でると、その右手でそのまま拳を作り、腹から絞り出した大声と共に高々と突き上げた。


     〜チャン=ウーファン自叙伝、および後ナンシン朝史「武帝記」より抜粋編集



364年2月 テムギンイベントによりイェフィの訓練度100に
     チャン:移動(イェフィ)
     クミスネ:登用→トゥロ(成功)
     テムギン:治安

364年3月 出陣→チャルダラ
     チャン・テムギン:騎兵6000 トゥロ:弓兵2100 クミスネ:弓兵残り全部
posted by 霧野 流 at 20:17| Comment(2) | TrackBack(0) | フリゲ
この記事へのコメント
こんばんは、霧野さん。和光です。
こんなに有り難い文章を書いて下さっているのに、
今まで挨拶に行けなかったのは、本当に申し訳なく思います。
リアル事情が忙しいとはいえ、怠慢だったなぁと。

しかし、Ararat本編よりも読みごたえがありますね!
特に、ミツハをただの小娘と断言するチャンには痺れました。
確かに、ミツハとしてはランジェ辺りに根回しするなどして、
セレスに取り入れられるように裏工作してしかるべきだよなーと。

ともあれ、有難うございます!
続きを楽しみにしておりますですよー。
そして、水面下で動いているArarat関連の企画も、
形になり次第公開したいと思います。
こちらもお楽しみに!

ではでは、失礼しますー。
Posted by 和光佳清 at 2010年10月23日 23:26
ご丁寧にありがとうございます。
リアルがきついと余暇は疲労を取るだけで1日終わる、
そんなのはもうよくある事なのでお気になさらず。

ナンシン組の性格は捏造入り放題でお恥ずかしい限りですw
チャンは個人的には水滸伝系の中華豪傑好漢のイメージがあります。
その割に武力はルーチェと変わらなかったりしますが…w
セレス&ミツハはミリディアシナリオでの小娘っぷりが
深く印象に残っておりまして、感じた通りの性格としているつもりです。
ミリディアはかなり好きです。両ルート最後までやったくらい。

新企画の方も楽しみにさせていただきます。
こちらも一応また別の支援物資も考えているのですが、
それはいつになるやら目処も立ちませんw
Posted by 霧野 at 2010年10月28日 00:32
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