2010年10月03日

ナンシン王朝プレイ記・1

Ararat支援計画。
ファンアートがちっとも進まないので、結局俺の得意分野の方で支援物資を。

注意書きは以下。

・ネタバレの塊です。プレイ予定のある人、またはプレイ中の人はご注意。
・Ararat本編には可能な限りの敬意を表しているつもりですが、
 設定や世界観の細部の差異や、一部のキャラクターを貶める描写があるかもしれません。
・息抜き程度に書いているだけなので、掲載は不定期です。
・下手、読みにくい、など感じられる事があるかもしれませんが、それは当方の技量の問題なので笑い飛ばす程度でご了承を。


それでも読んでやる、と言う方のみ続きをどうぞ。


あの時に、星空に夢中になっていなければ決して気付かなかったような、小さな小さな予兆でした。
その小さな予兆から大きな運命を手繰り寄せたのは、陛下の大器あってこそと申し上げて良いでしょう。

                    〜後ナンシン朝史 初代皇妃・クミスネ=チャンの手記より




 雲ひとつ無い、澄み通るような夜空だった。
黒絨毯に宝石箱の中身をばら撒いたような、色も大小も千差万別の煌きたちが、深遠なる宵闇を鮮やかに彩っていた。

「こんな日は卦の事も戦の事も忘れて、ただ星空を眺めていたくなりますね」

豪傑風の男の傍らに控える幕僚・クミスネ=ラキアパンディダが口を開いた。
クミスネは汚れも知らぬ少女のような風貌ながら、易・天文・風水・奇門遁甲その他もろもろ古今東西の占術に通じた占卜の達人である。
占卜とは、吉兆・凶兆の顕れを見逃さない事が肝要。そう考える彼女は、毎晩の寝床に就く前に高楼にて天の運行を眺める事を日課としていた。

「その為に俺たちは戦っているのだろうよ。誰もが明日の不安を感じる事無く、星天の輝きを楽しめるように」

豪傑風の男・チャン=ウーファンが、その大きく無骨な掌をクミスネの小さな肩に乗せた。拳法を修めたチャンの掌の硬さと重さが、衣越しに伝わる。
チャンはかつて隆盛を誇ったシン族の末裔、そしてクミスネは古来よりシン族に従うイ族の実力者。
古ナンシン王朝の再興を掲げるチャンは、その卓越した占術でナンシンの旗印を導いてきたクミスネに絶対の信頼を寄せていた。
現在の根城・ルーシュンを得ると言う大功も、クミスネの卦に従って軍を興した結果であった。

「でも、たまには息抜きもいいじゃないですか。古来より、占術ばかりアテにするのは暗君愚君の所業ですし」

ただ星空に魅入られているのか、それとも言葉とは裏腹に占星の事を考えているのか。答えるクミスネの視線は、天を見つめたまま毛の先ほども動いていなかった。
占術を重要な判断材料としながらも、決して占術に溺れてはならぬ事を二人はよく知っていた。

「それは、彼らが占卜の正しい使い方を心得なかったからに過ぎぬ。人の立てる卦が、天の立てる時を全て手に取る事などある物か」

言葉を返すチャンの傍で、クミスネの表情が、僅かに変わった。

「あれは……」

クミスネが指差す先で、一際明るく大きな赤い星が細かな明滅を繰り返していた。
何時より激しく燃えながらも儚さと不安定さを感じさせる、消える間際の蝋燭。その姿を思わせるような赤光だった。

「……どうかしたのか?」
「星が、近いうちに、墜ちます」

真意を掴みかねるチャンに、クミスネはハッキリと言い切った。幼い頃から占術を学び天文地理を友としてきた彼女だからこそ感じられる、微かな兆候だった。

「その星が何を意味するかは、わかるか」

強い口調で、チャンが尋ねた。天の与える機運はどんな小さくとも逃さぬ気概が、自然と語気に表れた。

「まだ、そこまでは…………」

ようやく星空から目を放して小さく顔を伏せるクミスネ。今度はその頭上に、チャンの掌が優しく乗せられた。

「まあ、これ以上の夜風は身体を冷やす。今夜はそろそろ休んでおけ」

やがてチャンは、返答を待たずに高楼から降り、ゆっくりと自室へ引き上げていった。

「あ、チャン様、ちょっと待ってください!」

慌てて後を追いかけるクミスネだが、その間もしきりに何かを確かめるように、あるいは後ろ髪を引かれるかのように、夜天に揺らめく紅星を何度と無く振り返っていた。
posted by 霧野 流 at 00:26| Comment(0) | TrackBack(0) | フリゲ
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